金 属 分 析 の 不 確 か さ に 関 す る 研 究
谷 口 秀 樹
工 業 化 学 担 当
St u dy on th e u n ce r t ai n ty of me t al an a l ys i s
H i d e k i T A N I G U C H I
I n d u s t r i a l C h e m i s t r y S e c t i o n
要 旨
ス テ ン レ ス 材 料 中 の マ ン ガ ン 含 有 量 分 析 に 関 す る 不 確 か さ を 求 め た ． 前 処 理 の ば ら つ き の 不 確 か さ を 分 散 分 析
か ら ， ま た 前 処 理 の 偏 り の 不 確 か さ を 添 加 回 収 試 験 か ら そ れ ぞ れ 求 め ， ガ ラ ス 器 具 容 積 の 不 確 か さ ， 標 準 原 液 や 検 量 線 標 準 液 の 不 確 か さ ， 検 量 線 の 不 確 か さ を そ れ ぞ れ 求 め 合 成 し た ． 得 ら れ た 合 成 標 準 不 確 か さ に は 検 量 線 か
ら 得 ら れ る 濃 度 の 不 確 か さ が 最 も 影 響 し て い た ．報 告 値 に 対 す る 不 確 か さ (k = 2 ) は ，妥 当 な 不 確 か さ と 考 え ら れ る ．
1. はじめに
1.1 ISO17025 技 術 要 求 事 項 の 不 確 か さ の 見 積 も り
と 化学 分 析 の 前 処理
不 確か さ と は ， 測定 の 結 果 に 付 随し た ， 合 理 的に 測 定 値 に結 び 付 け ら れ得 る ば ら つ き を特 徴 づ け る パラ メ ー タ
で あり ，1993年 に発 行 さ れ た 信 頼性 表 現 が 計 測に お け る 不 確か さ の 表 現 ガイ ド （GUM） で定 義 さ れ て いる ．
品 質マ ネ ジ メ ン トシ ス テ ム のISO9001を ベ ース に 試 験
所 及 び 校 正 機 関 の 能 力 に 関 す る 一 般 要 求 事 項 で あ る ISO/IEC17025が1999年 に 発 行 され ， 多 く の 分析 機 関 が 国 際 的 に 通 用 す る 認 証 を 受 け て い る （ JIS で は JIS Q
17025） ．ISO17025 の 技 術 的 要 求事 項 の 中 で ，不 確 か さ を 見積 も る こ と が要 求 さ れ て い る
(1)
．
1.2 前 処 理
こ こで ， 化 学 分 析で は い わ ゆ る 前処 理 と 呼 ば れる 試 料 の 溶液 化 や 分 解 など の 操 作 を 行 った 後 に 機 器 分析 す る こ
と が多 い ． こ の 操作 に お い て ， 十分 で な い 溶 液化 や 分 解 不 足， マ ト リ ッ クス の 干 渉 な ど によ っ て 真 値 から 外 れ て
い くた め ， 前 処 理の 妥 当 性 確 認 は不 可 欠 で あ る． 前 処 理 の 不確 か さ 評 価 につ い て は 山 澤 が前 処 理 操 作 や種 類 に よ ら ない 不 確 か さ 評価 方 法 を 提 案 して い る
(2)
．
1.3 水 中 金属 分 析 の 不確 か さ
平 成24年 度の 報 告 で は，鉱 山 坑 廃水 の ア ル カ リ処 理 後
の 処理 水 中 の 鉄 につ い て 不 確 か さを 求 め た ． 試料 秤 量 ，
試 料定 容 ， 試 料 希釈 ， 検 量 線 標 準液 ， 検 量 線 の縦 軸 を 要 因 とし た と き ， 検量 線 の 縦 軸 の 不確 か さ が 合 成標 準 不 確 か さに 最 も 影 響 して い た ．
平 成 25 年 度 の 報告 で は 同 様 に 鉱山 坑 廃 水 の アル カ リ 処 理後 の 処 理 水 中の 微 量 元 素 で ある カ ド ミ ウ ムに つ い て， 固 相抽 出 に よ る マト リ ッ ク ス の 除去 お よ び 目 的元 素 の 濃
縮 をす る 前 処 理 につ い て 不 確 か さを 求 め た ． その 結 果 ， 合 成標 準 不 確 か さに 最 も 影 響 す る要 因 は 前 処 理の ば ら つ き の相 対 標 準 不 確か さ で あ っ た ．
1.4 不 確 かさ 評 価 と 技術 相 談
セ ンタ ー に 寄 せ られ る 様 々 な 企 業か ら の 要 望 ・依 頼 ・
技 術相 談 ・ 共 同 研究 な ど に ， 即 応で き る 環 境 づく り を 目 的 に分 析 手 法 ・ 分析 操 作 の 妥 当 性確 認 の た め に不 確 か さ
を 求め る こ と と した ．
分 析操 作 や 分 析 手法 の 妥 当 性 の 確認 す る 方 法 とし て ， ① 添加 回 収 試 験 の回 収 率 を 求 め る， ② （ 独 ） 産業 技 術 総 合 研究 所 計 量 標 準総 合 セ ン タ ー （NMIJ） や （ 財） 日 本 分
析 化学 ，（ 一社 ）鉄鋼 連 盟 な ど が 頒布 す る 河 川 水や 底 質 ， 鉄 鋼な ど の 認 証 標準 物 質 を 用 い る，③ NMIJが 実施 す る バ
リ デー シ ョ ン と 不確 か さ 評 価 の ため の 技 能 試 験や 環 境 省 が 実施 す る 環 境 測定 分 析 統 一 精 度管 理 調 査 ， 産業 技 術 連 携 推進 会 議 知 的 （産 技 連 ） 基 盤 部会 分 析 分 科 会が 実 施 す
る 共同 分 析 な ど の技 能 試 験 に 参 加す る ， な ど があ る ． こ れら の 方 法 に 加え て ， 不 確 か さを 求 め る こ とに よ っ て ，分 析 の 前 処 理や 測 定 等 の 各 操作 の 要 因 ご との 不 確 か
析 手法 ・ 分 析 操 作の 妥 当 性 や 課 題の 洗 い 出 し をす る こ と
が でき る と 考 え る．
そ こで ，本 報 告で は 分 析 対象 を 平 成25年度 産 技 連 分析 分 科会 共 同 分 析 の分 析 対 象 の 課 題に も な っ た ステ ン レ ス
を 選び ， 含 ま れ るマ ン ガ ン 分 析 の不 確 か さ を 求め た ．
2. 実験方法
2.1 試 料
金 属分 析 に お け る不 確 か さ の 算 出と し て ， ス テン レ ス 鋼304を 検 体 と して 用 い た．目 的元 素 は マ ン ガン と し た．
2.2 操 作 手順 の 明 確 化
不確 か さ の 算 出の た め ， 操 作 手順 を ， 次 の よう に 決 め た ．
(1)酸 分 解
試 料 を 200mL コ ニ カ ル ビ ー カ に 500mg 秤 量 し ， (1+1)硝 酸 を 12mL添 加 し， 次 に(1+1)塩 酸 を 12mL 添 加 ． ホ ッ ト プ レ ー ト 上 で 加 熱 し ， 目 視 で 透 明 に
な るま で 分 解 し て放 冷 し た ．そ の後 ，5Cろ 紙 で ろ 過 し ，(1+50)温 塩 酸で 洗 浄 し ，250mLに 定 容 した . (2)検 液 調 整
上 出 来 得 ら れた 分 解 液 を5mL分 取 して ， 1000mg/L イ ッ ト リ ウ ム 標 準 液 を 希 釈 し て 得 た 100mg/L イ ッ
ト リウ ム 溶 液 を 内標 準 と し て 5mL添 加し ， 50mL に 定 容し た （ 10倍 希 釈） ．
(3)添 加 回 収試 験
1003mg/Lの マ ン ガン 標 準 液 10mLを 試 料に 添 加 し て
(1)～(2)の 操 作 を行 う ． (4)検 量 線
1003mg/L の マン ガ ン 標 準 液 を 希釈 し て 100mg/L マ ン ガン 中 間 標 準 液を 調 整 ．中 間 原料 標 準 液 を 希釈 し ， さ らに マ ト リ ッ クス と し て ， 純 鉄500mgを （ 1） と
同 じ操 作 を し て 得た2000mg/L溶 液 を 添加 ， 内 標 準 と し て イ ッ ト リ ウ ム 100mg/L 溶 液 を 添 加 し て ， 8mg/L ～ 0.5mg/L の 検 量 線 標 準 液 を 調 整 ． 検 量 線 標
準 液 をICP-AESに導 入 し ， 検 量 線を 作 成 ． (5)測 定
検 液及 び 添 加 検 液 をICP-AESに 導入 し ，内 標 準 補正
検 量 線 法 で 測 定 試 料 中 の マ ン ガ ン の 濃 度 を 測 定 ． ICP-AES は ラ ジ ア ル測 光 が 2方 向か ら 同 時 に 測定 で き るタ イ プ の 装 置で ，一 方 を マ ンガ ン ，他 方 を内 標
準 イッ ト リ ウ ム とし て そ れ ぞ れ 同時 に 測 定 し た．
2.3 不 確 かさ の 要 因 の列 挙
(1) 検 量 線 標 準液 の 不 確 か さ (2) 検 量 線 縦 軸の 不 確 か さ (3) 前 処 理 の ばら つ き の 不 確 かさ
(4) 前 処 理 の かた よ り の 不 確 かさ
2.4 取 り 上げ な か っ た不 確 か さの 要 因
通常 ， 小 さ い と思 わ れ る 次 の 要因 と 測 定 の 繰り 返 し の
中 に含 ま れ る と 考え ら れ る 要 因 は， 今 回 の 不 確か さ 算 出 で は取 り 上 げ な かっ た ．
(1) 試 料500mg秤 量 の 不 確 か さ
(2) 温 度 変 化 によ る ガ ラ ス の 体積 変 化 に よ る不 確 か さ (3) 添 加 回 収 試験 の 添 加 操 作 の不 確 か さ
(4) 濃 縮 後 定 容操 作 の 不 確 か さ
3. 結果と考察
3.1 検 量 線標 準 液 の 濃度 の 不 確か さ
3.1.1 原 料標 準 液1000mg/Lの 不確 か さ
1000mg/Lの カ ド ミウ ム 標 準 液 の信 頼 性 は，JCSS証 明 書
か ら値 付 け 値1003mg/L，不 確 か さ0.5%(k=2)で あ る た め， こ こ で は 矩 形 分 布 と 仮 定 し ， 標 準 不 確 か さ u(s
1
) お よ び
相 対標 準 不 確 か さ
1 1) (
s
C s u
は次 の よ う に なる ．
L mg L
mg s
u 2.8954 /
3 005 . 0 / 1003 ) (1
002886 . 0 / 1003
/ 8954 . 2 ) (
1 1
L mg
L mg C
s u
s
3.1.2 原 料標 準 液 の 希釈 操 作 の不 確 か さ
原 料標 準 原 液 か ら次 の 操 作 で 検 量線 標 準 液 を 調整 し た （Table 3-1） ．
Table 3-1 標 準 液 希 釈操 作 希 釈前 濃 度
(mg/L)
全 量 ピ ペ ッ ト 容 量 ／ 全 量フ ラ ス コ 容 量
希 釈後 濃 度 (mg/L)
1000 5/50 100
100 5/50 10
100 2/25 8
100 3/50 6
100 2/50 4
10 10/50 2
10 5/50 1
10 2.5/50 0.5
希釈 に 用 い た 全量 ピ ペ ッ ト と 全量 フ ラ ス コ の分 取 ， メ
ス アッ プ の 10 回の 繰 り 返 し 結 果か ら 求 め た 繰り 返 し の 相 対 標 準 不 確 か さ ， JIS R3505 の 許 容 差
(3)
か ら 求 め た 目 盛 線 の 相 対 標 準 不 確 か さ ， 試 験 室 の 温 度 範 囲 を
20℃±5℃ とし て 水 の 体 膨張 係 数 2.1× 10
-4
か ら 求 め た 温 度 変化 に よ る 相 対標 準 不 確 か さ をTable 3-2に示 す 。
これ ら の 検 量 線標 準 液 の 相 対 標準 不 確 か さ を原 料 標 準
目 盛り 線 の 不 確 かさ ， 温 度 変 化 の不 確 か さ を 合成 し て 求
め た（ Table 3-3）
Table 3-2 標 準 原 液 希釈 の 相 対標 準 不 確 か さ
種 類 容 量 (mL)
目 盛線 繰 り返 し 温 度変 化
全 量 ピ ペッ ト
2 0.0020412 0.0011754 0.000606 2.5 0.0024494 0.0006906 0.000606 3 0.0020412 0.0003777 0.000606 5 0.0012247 0.0002814 0.000606 10 0.0008165 0.0000935 0.000606 全 量
フ ラス コ
25 0.0006532 0.0006384 0.000606 50 0.0004899 0.0006650 0.000606
Table 3-3 検 量 線 標 準液 の 相 対標 準 不 確 か さ
検 量線 標 準 液 濃 度 (mg/L)
相 対標 準 不 確 か さ
8 0.004295
6 0.004129
4 0.004614
2 0.004052
1 0.004162
0.5 0.004713
0.5mg/L ～ 8mg/L の 検 量 線 標 準 液 の 相 対 標 準 不 確 か さ
は ，0.004713～ 0.004052で あ る ので ，こ こ で は 最 も大 き な0.004713を 検 量 線 標準 液 の 相対 標 準 不 確 かさ と し た．
3.1.3 検 量線 か ら 求 めた 濃 度(x 0
)の 不確 か さ
調 整 し た 検 量 線 標 準 液 と ICP-AES 発 光 強 度 の 関 係 を Table 3-4に 示す ．
Table 3-4 検 量 線デ ー タ(ICP-AES) 検 量線 標 準
濃 度(mg/L) x
0 0.5 1 2
ICP-AES 強 度比 y
0.000406 0.24321 0.48560 0.96583
検 量線 標 準 濃 度(mg/L) x
4 6 8
ICP-AES 強 度 比y
0.199588 2.98157 3.98812
こ の検 量 線 デ ー タか ら 測 定 試 料 濃度 の 不 確 か さ（ 試 験 試 料か ら の 機 器 信号 の 偶 然 誤 差 ）は 一 般 的 に 次の 近 似 式
よ り求 ま る
(5)
．
2 2
2 0 0
0
1 1
x x b
y y m n b S S
i y
x ･･･式1
2
/
2
0
y
bx
a
m
S
y i i ･･･式2S
x0
： 測 定濃 度 の 不 確か さ S
yo
： 縦 軸の 不 確 か さ（ 検 量 線 縦 軸測 定 値 の ば らつ き ） b： 検 量 線 の傾 き
n： 測 定 試 料の 測 定 繰 り返 し m： 検 量 線 の濃 度 数× 繰 り返 し y
0
： 測 定 試料 の 測 定 値（ 機 器 出 力） y
i
： 検 量 線の 各 測 定 値
y： 検量 線 測 定 値 の平 均 値
x
i
： 検 量 線標 準 液 の 各濃 度
x： 検量 線 標 準 液 の各 濃 度 の 平 均 値
式1，式2に そ れ ぞ れ の値 を 入 力し て ，S
x0
，S
y0
を 求 め た． S
x0
＝0.0007406 S
y0
＝0.0123044
Table 3-1か ら 検 量 線の 横 軸（ 標 準 液 濃度 ）の分 散S
x 2
， 縦 軸の 共 分 散S
xy
を そ れぞ れ 求 めた ．
88775
.
7
22
m
x
x
S
i
x
93906
.
3
m
y
y
x
x
S
i i
xy
こ れら か ら 傾 きbお よ び 切 片aを 求 め た ．
01089
.
0
x
b
y
a
49939
.
0
2 x xy
S
S
b
なお ， 検 量 線 の相 関 係 数rは
99997
.
0
2 2
y x
xv
S
S
S
r
とな る ．
測 定試 料 の ICP-AES 発 光強 度 結 果 を Table 3-5 に示 す ． 検 量線 を 用 い て 濃度 に 変 換 し た 値の 平 均 値 を ICP-AES 測 定液 の 希 釈 倍 率10倍お よ び 定 容250mLを 乗じ ，試料 の
秤 量 値 500mg の 平 均 値 で除 し た 値が 測 定 結 果 M
0
Table 3-5 試 料 の 測 定結 果
前 処理 1回 目 2回 目 3回 目 平 均
ICP-AES 出 力値
0.885516 0.892279 0.888717
0.886273 0.892970 0.888269 0.888385 0.891145 0.888552
0.888609 0.892132 0.885829
0.887863 0.892911 0.886069
出 力値 平 均
0.887329 0.892287 0.887487 0.889035
濃 度 (mg/L)
1.79863 1.80856 1.79895 1.80204
(%) 89511 . 0 100 3 / ) 5014 . 0 5053 . 0 5932 . 0 /( 25 . 0 10 1000 80204 . 1 0 M
3.2 前 処 理の ば ら つ きの 不 確 かさ
前 処 理の ば ら つ き の不 確 か さ を 算 出す る た め ， 有意
差 検定 を 行 っ た ．2 つ 以 上 の 試 料が あ る 場 合 の平 均 値 間 の有 意 差 に 対 する 一 元 配 置 分 散 は Table3-6 の よ う に 求め る
(2),(4)
． こ れにTable3-5のICP-AES出 力 値 を
濃 度 に 換 算 し ， 一 元 配 置 分 散 分 析 を 行 っ た ． 結 果 を Table 3-7に 示す ．
Table 3-6 一 元 配 置 分散 分 析 変 動要 因 変 動S
(平 方 和)
自 由 度f 分 散V
試 料間 2
i i
x x
n h 1 S/V
試 料内 2
i j ij i
x
x hn 1 S/V
計 2
i j ij
x
x hn 1
Table 3-7 分 散 分 析 の結 果
変 動S 自 由 度f 分 散V
前 処理 間B 0.000079419 2 0.000039709
前 処理 内e 0.000017641 12 0.000001401
合 計 0.000097061 14
前 処理 の ば ら つ きu
TR E1
は 次 の 式 から 求 め た ．
N
n
V
V
u
e B TRE)
(
1 ・・・ 式3
V
B
： 前 処 理間 の 分 散 V
e
： 前 処 理内 の 分 散 ｎ ：測 定 回 数
N： 前 処 理 回数
ｎ ＝5，N＝3 で あ るの で ，式 3 に 代入 し ，u
TR E1
＝ 0.002029(%)
と な り ， 相 対 標 準 不 確 か さ (u
TR E1
/M
0
) は 次 の と お り と な っ た ．
002267 . 0 89511 . 0 002029 . 0 0 1 M uTRE
3.3 前 処 理の か た よ りの 不 確 かさ
マン ガ ン 標 準 液（1003mg/L±0.5%(k=2)）を 試 料 に10mL 添 加し て ， 同 様 に前 処 理 を 行 い ，ICP-AES 測 定し て 検 量 線 を 用 い て ， 添 加 量 に 対 す る 回 収 率 を 求 め た ． 結 果 を
Table 3-8に 示す ．
Table 3-8 添 加 回 収 試験 の 結 果
前 処理 1回 目 2回 目 3回 目 平 均
ICP-AES 出 力値
2.897279 2.897910 2.899071
2.901496 2.900155 2.904597 2.894345 2.903356 2.899292
2.900132 2.902069 2.903189 2.893994 2.898686 2.902403
出 力値 平 均
2.897449 2.900435 2.901711 2.899864
濃 度 (mg/L)
5.823788 5.829766 5.832321 5.828627
回 収率 (%) 100.1 100.3 100.3 100.2
添加濃度 M
100
=4.012mg/L(=2.8879%)，試料濃度 M
smp
=1.80242mg/L(=0.89512%) ， 添 加 回 収 試 験 測 定 値 M
REC
=5.828mg/L(=2.8979%)か ら 回 収 率 は 100.3%と 得 ら れ ，
回 収 率100%と の 差 はな か っ た ． か たよ り の 不 確 か さu
TRE2
は 次 の 式か ら 求 め た ．さ ら に
M
MEA
（ ＝ M
REC
－ M
smp
） で 除 し て 相 対 標 準 不 確 か さ u
TRE2
/M
MEA
を 求め た ．
2 100
2 100
2 ( REC) ( CRM/ CRM)
TRE M M M u M
u ･･･式4
0061588 . 0 0028 . 2 0025 . 0 8879 . 2 0028 . 2 8979 . 2 8879 . 2 / 2 2 2 100 2 100 2 MEA CRM CRM MEA REC MEA TRE M M u M M M M M u
･･･式5
3.5 不 確 かさ の 合 成
こ こま で 検 討 し たそ れ ぞ れ の 不 確か さ を ， 前 処理 に 起 因 する 不 確 か さ と検 量 線 か ら 得 られ た 濃 度 の 不確 か さ に
Table 3-9 バ ジ ェ ッ トシ ー ト
不 確か さ の 要 因 相 対標 準
不 確か さ
備 考
合 成標 準 不 確 か さ 0.010283053
前 処理 に 起 因 す る不 確 か さ 0.00623667
前 処理 の ば ら つ き 0.000982
前 処理 の か た よ り 0.006158
検 量線 か ら 得 ら れた 濃 度 の 不 確か さ
0.00817588
検 量線 の 濃 度 の 不確 か さ 0.004713
標 準液 の 縦 軸 の 不確 か さ 0.000668
3.6 結 果 の表 示
合成 標 準 不 確 か さ0.0102830を 絶 対 値(%)に 戻 す．
0.0102830×0.89511975(%)＝0.00920456(%) 包 含係 数k=2と し た と きの 拡 張 不確 か さ は ，
0.00920456×2＝0.0184092(%) と なる ． よ っ て ，結 果 の 報 告 は 次の と お り ．
SUS中 のMn濃 度 0.90% ±0.02% (k=2)
4. 不確かさの要因 とまと め
前 処理 の 不 確 か さと 検 量 線 か ら 得ら れ る 濃 度 の不 確 か さ とを 比 較 し た 結果 をFig.1に 示す ．
Fig.1 ス テン レ ス 中 マン ガ ン 濃度 (0.90%)測 定 の 要因 ご と の相 対 標 準 不 確か さ と 合 成 標 準不 確 か さ
平 成 25 年 度 報 告
(5)
で は 鉱 山 坑 廃 水 の ア ル カ リ 処 理 後 の 処理 水 中 の 微 量元 素 で あ る カ ドミ ウ ム に つ いて ， 不 確
か さを 求 め ， 合 成標 準 不 確 か さ への 寄 与 は 検 量線 か ら 得 ら れた 濃 度 の 不 確か さ よ り も 前 処理 に 起 因 す る不 確 か さ の 方が 大 き か っ た．
今 回の ス テ ン レ ス中 の マ ン ガ ン につ い て は 合 成標 準 不 確 かさ へ の 寄 与 は前 処 理 に 起 因 する 不 確 か さ より 検 量 線 か ら得 ら れ た 濃 度の 不 確 か さ の 方が 大 き か っ た．
平 成 25 年 度 報 告と は 環 境 水 と 材料 と で 試 料 の性 状 が 異 な る こ と ， 測 定 濃 度 に つ い て は 0.02mg/L の 低 濃 度 と
1.8mg/L の 比 較 的 測 定 し や す い 濃 度 で あ る こ と ， 今 回 は イ ット リ ウ ム を 内標 準 物 質 と し て補 正 し て い るこ と な ど
条 件が 大 き く 異 なる た め ， 比 較 は難 し い が ， 合成 標 準 不 確 かさ に 影 響 が 大き い 要 因 は 一 概に は 言 え ず ，試 料 ご と
や 前処 理 ご と に 確認 し て お く こ とが 必 要 で あ るこ と が わ か った ．
な お ，回 収率 に つ い て は100%が 得ら れ て お り ，分 析 条 件 は妥 当 な も の と思 わ れ る ．
平 成 26 年 度 に おい て 誘 導 結 合 プラ ズ マ 質 量 分析 装 置 （ ICP-MS/MS ） や マ イ ク ロ 波 分 解 試 料 前 処 理 装 置 を 平 成
25 年 度 補 正 予 算 事 業 地 域 オ ー プ ン イ ノ ベ ー シ ョ ン 促 進 事 業で 設 置 し た ．よ り 試 料 量 が 少量 で あ っ て も， あ る い は 含ま れ て い る 濃度 が 低 く て も 測定 可 能 な 範 囲が 広 が っ
た ．
こ のICP-MSに よ る 微 量分 析 に つい て も ，不確 か さ の 考 察 や測 定 事 例 検 討を し て い き ， 県内 企 業 か ら の技 術 相 談
や 分析 依 頼 ， 企 業と の 共 同 研 究 など に 即 応 で きる 環 境 づ く りを し て い き たい ．
参 考文 献
(1) JIS Q 17025:試 験 所及 び 校 正 機 関の 能 力 に 関 する 一
般 要求 事 項 ， 日 本規 格 協 会 ， 2005
(2) 化 学分 析 に お け る前 処 理 の 不 確 かさ 評 価 ，JAIMAセ ミ ナー 要 旨 集 ，P218， 2013
(3) JIS R 3505:ガ ラ ス 体 積計 ， 日 本規 格 協 会 ，1994 (4) デ ータ の と り 方 とま と め 方 ，Miller，共 立 出 版 ，2004 (5) 水 質 分 析 に お け る 固 相 抽 出 前 処 理 の 不 確 か さ に 関
